横浜市立折本小学校創立35周年記念誌「わたしたちのまち」

第6話 真照寺のハクモクレンと長福寺のイチョウ

真照寺のハクモクレン(35周年記念誌より)
真照寺のハクモクレン(35周年記念誌より)

 みなさんは、折本学区にある有名な二本の木を知っているでしょうか。

 それは、春がやって来たことをいち早く知らせる真照寺のハクモクレンと、深まりゆく秋のさびしさを教えてくれる長福寺のイチョウの木です。

 

 この二本の木は、1974(昭和49)年に横浜市の名木、古木に決められて、それぞれのお寺の境内で、大地にどっかりと根を下ろし、見事な大木となって、空高く突っ立っています。

 ハクモクレンは、428号、イチョウは、429号として、横浜市の緑政局が指定し肥料をやったり、木の周りに柵をしたりして、少なくなっていく緑を大切に見守っています。だから、勝手に切り倒したり、木の幹に傷をつけたりしてはいけないのです。

 雨にも負けず、風にも負けず、力強くたくましく生きてきたこの二本の大木には、いったいどんな歴史があるのでしょうか。

 

 ハクモクレンの事については、六年生の雲井さんが作文に次のように書いています。

 

 「わたしのお寺の山門をくぐりぬけると、敷石の左手に沙羅(さら)の木、右手には大王松が天高く伸びています。そして、その前には、木の年齢は130年ぐらいといわれているハクモクレンが豊かな枝を伸ばしています。

 このハクモクレンの木の下には、折本の自然をこよなく愛した詩人、佐藤惣之助(さとうそうのすけ)の文学碑が建てられています。

 ハクモクレンは、毎年春になると白い花をたくさん咲かせます。

 わたしのお父さんは、子どもの頃、よくこの木に登って遊んだそうです。折れやすい木なので、何度か落ちたことがあるそうです。わたしは一度も登ったことはありませんが、青い空の中に真っ白に咲くハクモクレンの花を眺めるのが大好きです。

 わたしのひいおじいさんの頃、ひいおじいさんの文学仲間が沢山集まって、『折本会』を作りました。そして、ハクモクレンの木の下にゴザを敷いてサロンにし、文学の話をしたり詩や歌を書いたりしました。

 それなのに、わたしの大好きなハクモクレンの事を書いた詩や歌が、残念ながら見つかっていません。しかし、わたしは、この美しい花を咲かせるハクモクレンの事を詠んだ詩や歌があるに違いないと思っています。」

 

長福寺のイチョウ(35周年記念誌より)
長福寺のイチョウ(35周年記念誌より)

 小学校からもよく見える大きなイチョウの木。みんなも写生会でおなじみになった大きなイチョウの木。夏は、周りの緑に取り囲まれて目立ちませんが、秋も終わりに近づくと、黄色に色づいて遠くからでもひと目でとらえることが出来ます。そして、冷たい北風がピューピュー吹き始めると、葉っぱがヒラヒラと散り始めます。

 

 お寺の鈴木田さんは、

 「落葉を掃き集めるのが大変なんですよ。よそ様の庭にまで飛んで行って迷惑をかけています。

『金色の小さき鳥の形して、イチョウ散るなり夕日の丘に』

 という歌そのものの風景ですよ。」

と、おっしゃっていました。

 

 イチョウの木には、め木とお木があります。二本一緒に植えないと、銀杏は出来ません。長福寺のイチョウは、お木一本だけなので、百年以上もたつのに一粒の実も出来ないのです。また、イチョウの木は、木の皮が厚いので火に強く、少しの火災があっても枯れることはありません。長福寺のイチョウの木も、防火樹として火災からお寺を守ってきました。また、強い風を防ぐ防風樹としても、その役目を果たしてきました。

「横浜市立折本小学校創立35周年記念誌 わたしたちのまち」より

~「第6話 真照寺のハクモクレンと長福寺のイチョウ」を読んで~

本堂から山門に向かって(左に大王松、右にハクモクレン)
本堂から山門に向かって(左に大王松、右にハクモクレン)

 

 「横浜の古木名木」とは、横浜市が指定した樹齢が概ね100年以上で、故事・来歴・由緒があるか、又は象徴的樹木として親しまれている樹木です。

 

 都筑区ホームページで調べたところ、現在都筑区全体で約30本が指定されているようです。このうち「長福寺のイチョウ」は仲町台4丁目にあるので、折本町内にあるのは「真照寺のハクモクレン」のみです。

 

 これらの古木名木は、それぞれ樹木医による定期的な診断と手厚い治療がなされています。近隣の東方町や池辺町などにもいろんな古木名木があるようなので、機会をみつけて行ってみたいものです。


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 さて、HP管理グループは先日全員で真照寺を訪問し、「ハクモクレン」にまつわる話を真照寺住職の雲井耀一さんにたっぷりお聞きしてきましたので、みなさんにもお伝えします。

 

 まず気になっていた当時6年生の雲井さんですが、住職のご長女で今は東京に住んでおられるそうです。


 30年前に紹介された「ハクモクレン」は、今でもお寺の山門をくぐり本堂に向かった左手にあり、私たちが訪問した3月11日には開花直前の多くの蕾が暖かい春の訪れを告げていました。

 

 残念ながらハクモクレンのそばにあった「沙羅(さら)の木」はその後倒れてしまったそうですが、右手の「大王松(だいおうしょう)」は今でも威容を誇っていました。

 

・・・〈ただ、ご住職によれば、大王松特有の30センチ以上もある長大な松葉(通常の松の葉は2本だが、大王松は3本)の落葉は掃除がとても大変でかなわないとのことでした。〉

サルスベリ(百日紅)
サルスベリ(百日紅)

 

 真照寺にはこのほかにも多くの樹木があり、訪れた人の目を楽しませてくれます。これらの中の代表的な樹として、ハクモクレンの本堂寄りに恐らくは樹齢100年を超える巨大な「サルスベリ(百日紅)」があります。サルスベリの花は真夏に咲くので、我々が勘弁してほしくなるような猛暑日でも、きっと周囲から抜き出でて咲き誇っていることでしょう。


 しかし、このサルスベリもよく見ると、根元近くの太い幹は芯の部分が大きくえぐられており、周囲部分だけで持ちこたえているようでした。


・・・〈木々の面倒をみていくのも、きっといろんなご苦労があるのでしょうね。〉

 

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 ところで、みなさんはこの第6話にでてくる真照寺ゆかりの『佐藤惣之助(1890-1942)』という人をご存知ですか。佐藤惣之助さんは、年配の方は誰でも知っている川崎出身のとても有名な詩人・作詞家です。

 

 佐藤惣之助は多くの詩集を出したほか、「湖畔の宿」「赤城の子守唄」「お夏清十郎」「青い背広で」「すみだ川」「人生の並木道」「人生劇場」等の歌謡曲だけでなく、今も熱烈な阪神タイガースのフアンに愛唱されている「六甲おろし」の作詞家でもあります。


・・・〈実は筆者もここまでは知らなくて本当に驚きました!〉


 この話でも紹介されているように、真照寺と佐藤惣之助さんとの繋がりを説明するには、「6年生の雲井さん」のひいおじいさんの《雲井麟静(くもいりんじょう:1884-1971)》という方に登場してもらう必要があります。

惣之助の詩
惣之助の詩

 

 この方は真照寺第17世住職(現住職・雲井耀一さんの祖父)で、生前、折本町を中心に幅広い文化活動を展開してきた人でした。絵画や文章をたしなむ文人でもあり、音楽や演劇に造詣が深く、多くの文化人との交流も盛んでした。

 

 雲井麟静さんは、その多芸多才ぶりを発揮し、小学校で教職にも就きながらハーモニカ楽団を創設してその指導に尽力されたそうです。さらに、青年の非行化防止の一環として当時の都田村に劇団「都田・櫻月会」を設立して、淡島神社で定期公演をしたり、折本町の歌「折本音頭早苗節」を残すなど地域文化の向上に努められたそうです。

 

・・・〈正に折本町の大恩人ですね。〉


 さて、雲井麟静さんと深い親交があった佐藤惣之助さんは、1920年(大正9年)~1942年(昭和17年)の23年間にわたって毎年真照寺を訪れ、同行の仲間と文学論や芸術論を語ったり、折本の方達と交流していたとのことです。

 

・・・〈余程折本の地が気に入っておられたのでしょうね。〉

 

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 せっかくここまで書いたので、佐藤惣之助の詩句をいくつか紹介しましょう。


 「大いなる田舎 光栄の川 自然の祭」

・・・真照寺境内の詩碑の句で詩集『満月の川』に収録されている。


 「清らかな水をたたえよ ここに村の命の川は開きし」

・・・雲井麟静作の『生命の泉(1922年発行)』に惣之助が贈ったもの。『生命の泉』には小学校の副読本でもとりあげられ第4話でも紹介した「堂ヶ坂の切通し」の話が書かれている。


 「おもひでの ゆめよ五月の くさの中」

・・・亡くなる前年(昭和16年)に真照寺を訪れた際に残されたもの。画家の鈴木保徳の絵に惣之助自筆の句が書かれたものが真照寺にある。


・・・〈いずれも、佐藤惣之助さんの「折本の地」と「折本の自然」に対する深い思いが伝わってくる詩句ですね。〉


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 真照寺住職の雲井耀一さんにお聞きした話の内容はまだまだ盛りだくさんで、ここでは到底書ききれません。HP管理グループでは、『真照寺と折本ゆかりの人達』について別途まとめて掲載することを検討中です。

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